「この世に先は無い」
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灯台の見える絶壁に立ち
強風にあおられながら
海を見つめる
空を映して輝く海の青さを
くだけ散る海水を
鳴き叫ぶウミネコを
わたしは忘れない
あれから幾歳すぎたのか
世界中が
やさしく微笑んでた
あの時代

これから先は
静かな時間(とき)が始まる

突風に舞い踊る海水
群れ飛ぶウミネコ
目に焼きついて離れない
あのやさしかった時間(とき)
わたしの記憶のなかの片隅で
いつまでも
縹渺と浮かんでは
消えていくのだろう
わたしの意識が
無に帰するときまで



【1998/2/22日本海新聞掲載】