あの時
透明な空を旋回していた
あれは
ツバメだったのだろうか

雲ひとつ無い夏の空が
私の心に呼応して
鳴いていた

肉体も精神も
ボロボロの極限状態
私の痛みなど誰も知らない
わかるはずもない
そうやって
どんどん傷ついていく

透き通ったその青
見つめる瞳
流される涙
ここはこんなに静かなのに
誰も私の鼓動に
気づいてくれない
誰も私の帰りなど
待っててはくれない

でも
なぜか笑っている自分を
見つけてしまった
怖いのに
心細いのに
どうすることも出来ない

そんな私の代わりに
空は涙を流してくれている
泣けない私のために────


【1997/12/28日本海新聞掲載】