「軌跡」by


【1999/9/26日本海新聞掲載】

限りなく続く広大な空間が見える
どこまでも広がる機械たちの世界
息をしているものはひとつもない
その金属的な冷たさのなかに
たったひとりでわたしはいる



生物でないわたし
息をしていないわたし
ただ限りない思考だけを廻らせて



突然どこからともなく
天からか地からか生命の兆しが
わたしを包み込んでいった
命が身体に宿り
呼吸が身体を動かしていく



人間になったわたしは見た
無表情だった機械たちの変化を
眩しいくらいの新世界を



そしていつの間にかそこは
わたしだけのユートピア────




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