この暗い海の底
ここは心の海の底
永久に目を閉じ
永久に耳を塞ぎ
この冷たい
滞ったどす黒い場所で
待っている
髪に触ってくれるのを
頬に手を伸ばしてくれるのを
唇に唇を重ねてくれるのを
身体を抱きしめてくれるのを
「愛している」
「好きだよ」
耳元に囁いてくれるのを
待っている
閉じ込められた根源を
身体を精神を形作るための
もっとも大切な根源を
いつの日か
誰かが見つけ出してくれるまで
眠り続ける
この海の底で
そして───
見える
聞こえる
どこか高い高いところから
青白い一筋の光が差し
閉ざされたその眼を押し開き
どこか遠い遠いところから
優しい音が静かに流れ
塞がっていた耳に染み渡る
それはもう
そんなに遠いことじゃない
そこまで近づいている未来のこと
そうして私は目覚め
根源を目の当たりにする
私という根源を
Poem/Tenji
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