白い貝殻
幸せの青い鳥の話があるように
幸せの白い貝殻の話を
あなたは知っているだろうか
朝一番に浜辺でひろった
真っ白な貝殻に願いを刻んで
大きな木の下に埋めるといい
白い貝殻が幸せを運んでくれる
はるかな昔の夢語り
だが白い貝殻のある砂浜は
もうどこにも存在しない
広大に広がる空き地に
ポツンと立ちそびえるタワー
その下を恐ろしいスピードで
車が噴煙だけをまき散らし
ただ過ぎ去っていくだけ
空気はますます濁っていく
風景はますます荒んでいく
人の心も呼応して尖っていく
そして白い貝殻は
踏み潰され打ち捨てられるのだ
まるでそれはバラバラになった
骸骨のように薄汚れて見える
無邪気な子供の砂遊びのように
すべてを壊していることに
誰も気づこうとはしない