風を身体に受けながら
走り抜けていく
周りには何もない
見渡すかぎりの荒れ地だけ
あなたとの付き合いも
ずいぶん長くなったわね
怪我したこともあった
信号無視だってしたかもしれない
もし口がきけたら
それはあんたが悪いからよ
と、あなたは言うんでしょうね
仕事を辞めてから
雑踏から遠ざかってしまった
でも
古びて褪せてしまった赤色のあなたと
一緒に行動することが多くなって
あたしは
生まれて初めて心が自由になった
夏の名残の太陽が
まともに身体に照りつけて
腕は焼けるかもしれないけど
頭だけは大丈夫
車より汽車(ここら辺が田舎よね)より
制限速度三〇キロのあなたが
あたしには丁度いい
今、あたしの目に映る風景は
愛すべき故郷
遠くに連なる山並みが
青空を映して煌く海原が
そして沸き起こる今年最後の入道雲が
どこまでもどこまでも
あたしを未来に連れていってくれる
ブーンと軽い音を響かせて
(でも時々止まりそうになる)
あなたはあたしを運んでくれる
さあ、今日は
久しぶりに雑踏に紛れてみましょうか
あたしの問いかけに応えるかのように
あなたの音が変わったようね
嬉しそうにリズミカルに
よし、大好きなあなたのために
上等なガソリン買ってあげましょう
今日だけは特別に