目を閉じている
温かな空気が通りすぎていく
思わず立ち止まる
木々のささやく声が
川を泳ぐ魚の気配が
感じられる
遠くで聞こえるのは
あれは何だろう
ラヴェンダー色の雲を
目を開けて見つめる
太陽は西の空に傾いて
今日一日の平穏を
世界に告げている
あまりにもここは温かすぎる
冷たい風も白い雪も
灰色の雲さえも
この世界には存在していない
狂ってしまった世界に
決別するため一歩を踏み出した
目を閉じて私は夢を見よう
寒い冬の夢を────
冷たい冬の夢を────
「安らぎの灯火」
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